就業規則の作成・届出の義務10人の数え方・意見書・絶対的必要記載事項・周知
答え
常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成し、または変更する場合に、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません(労基法第89条)。就業規則は企業単位ではなく事業場単位で作成します。届出には、過半数労働組合または過半数代表者の意見を記した書面(意見書)の添付が必要です(労基法第90条)。
- 時期:
- 常時10人以上の事業場は作成・届出が義務
- 対象:
- 常時10人以上の労働者を使用する事業場
厚生労働省「モデル就業規則 令和7年12月版」にもとづく内容です。
最終更新:
企業単位ではなく「事業場単位」
就業規則は、企業単位ではなく事業場単位で作成し、届け出なければなりません。
1企業で2以上の営業所、店舗等を有している場合、企業全体の労働者の数を合計するのではなく、それぞれの営業所、店舗等を1つの事業場としてとらえ、常時使用する労働者が10人以上の事業場について作成の義務が生じます。
間違えやすい点:全社で30人いても、各店舗が5人ずつなら作成義務は生じません。逆に、全社の人数が少なくても1つの事業場が10人以上なら、その事業場には義務があります。数える単位を間違えると、結論が逆になります。
10人未満の事業場はどうなるか
事業場の労働者数が常態として10人未満である場合は、労働基準法上は就業規則を作成しなくても差し支えないとされています。届出も必要ありません。
ただし、行政機関は「労働者が10人未満であっても、就業規則を作成することが望まれます」としています。作っておけば、労働条件の行き違いを防げるためです。
ここでいう労働者には、正規社員のほか、パートタイム労働者や臨時のアルバイト等すべての者を含みます。
間違えやすい点:数えるのは「そのときの人数」ではなく「常態」です。時として10人未満になることがあっても、常態として10人以上であれば作成しなければなりません。逆に、繁忙期だけ10人を超えるような場合は、常態として10人未満と見ます。採用が続いて10人に乗ったまま、という状態になったら、そこが切り替わりどきです。
複数の事業場をまとめて届け出る方法
複数の営業所、店舗等の事業場を有する企業については、それぞれの就業規則が変更前・変更後ともに本社の就業規則と同一の内容である場合に限り、本社所在地を管轄する労働基準監督署長を経由して一括して届け出ることもできます。
また、就業規則の届出は電子申請でも行えます。
意見書と過半数代表者
届出には、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を記し、その者の氏名を記載した書面(意見書)を添付しなければなりません(労基法第90条)。
このときの過半数を代表する者は、次のいずれにも該当する者でなければなりません(労基則第6条の2)。
- 労基法第41条第2号に規定する「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)でないこと
- 就業規則の作成及び変更の際に、使用者から意見を聴取される者を選出することを明らかにして実施する投票、挙手等の方法によって選出された者であって、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと
間違えやすい点:会社が指名した人や、管理監督者を代表者にすると、要件を満たしません。「選出することを明らかにして」実施した投票や挙手が必要です。あとから手続きをやり直すことになりがちなところです。
必ず記載する事項(絶対的必要記載事項)
労基法第89条が定める、必ず記載しなければならない事項です。
- 労働時間関係:始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、ならびに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
- 賃金関係:賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期、ならびに昇給に関する事項
- 退職関係:退職に関する事項(解雇の事由を含む)
定めるなら記載する事項(相対的必要記載事項)
その事業場でルールを定める場合には、記載しなければならない事項です。
- 退職手当関係:適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法、支払の時期に関する事項
- 臨時の賃金・最低賃金額関係:臨時の賃金等(退職手当を除く)及び最低賃金額に関する事項
- 費用負担関係:労働者に食費、作業用品その他の負担をさせることに関する事項
- 安全衛生関係/職業訓練関係
- 災害補償・業務外の傷病扶助関係
- 表彰・制裁関係:表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項
- その他:事業場の労働者すべてに適用されるルールに関する事項
周知しなければ効力が発生しない
作成した就業規則は、労働者一人ひとりへの配付、職場の見やすい場所への掲示・備付け、電子媒体に記録しモニター画面等で常時確認できるようにするといった方法で、労働者に周知しなければなりません(労基法第106条第1項)。
就業規則は、作成したり労働者の代表者から意見を聴取しただけでは効力は発生しないと解されています。効力の発生時期は、何らかの方法によって労働者に周知された時期以降で、施行期日が定められているときはその日、定められていないときは通常は労働者に周知された日と解されています。
間違えやすい点:届け出れば終わりではありません。周知していない就業規則は効力が発生しないため、いざというときに根拠として使えません。
法令や労働協約に反する定めはできない
就業規則の内容は、法令およびその事業場において適用される労働協約に反してはなりません。反する就業規則については、所轄の労働基準監督署長がその変更を命ずることができます(労基法第92条)。
よくある質問
- Q. 就業規則は何人から作成義務がありますか?
- A. 常時10人以上の労働者を使用する事業場です。企業全体の人数ではなく、事業場ごとに数えます。
- Q. 店舗が複数あるときはどう数えますか?
- A. それぞれの営業所や店舗を1つの事業場としてとらえ、常時使用する労働者が10人以上の事業場について作成の義務が生じます。企業全体の労働者数を合計するのではありません。
- Q. 労働者が10人未満なら就業規則は作らなくてよいですか?
- A. 常態として10人未満であれば、労働基準法上は作成しなくても差し支えないとされています。届出も不要です。ただし行政機関は、10人未満であっても作成することが望まれるとしています。
- Q. パートやアルバイトも10人に数えますか?
- A. 数えます。正規社員のほか、パートタイム労働者や臨時のアルバイト等、すべての労働者を含みます。
- Q. 一時的に10人を超えた場合はどうなりますか?
- A. 判断するのは「常態」です。時として10人未満になることがあっても常態として10人以上なら作成義務があります。逆に、一時的に10人を超えるだけで常態として10人未満なら、義務は生じません。
- Q. 意見書は誰の意見が必要ですか?
- A. 過半数で組織する労働組合があればその労働組合、なければ労働者の過半数を代表する者です。代表者は管理監督者でないこと、選出目的を明らかにした投票・挙手等で選ばれ、使用者の意向に基づかないことが必要です。
- Q. 意見書に反対意見が書かれていても届け出られますか?
- A. 法律が求めているのは意見を聴いて書面を添付することです。同意を得ることまでは求められていません。ただし不利益変更の場合は、変更の理由と内容が合理的なものとなるよう慎重に検討する必要があります。
- Q. 届け出れば効力が発生しますか?
- A. しません。作成や意見聴取だけでは効力は発生しないと解されています。労働者に周知された時期以降に効力が生じます。
- Q. 本社でまとめて届け出ることはできますか?
- A. 各事業場の就業規則が変更前・変更後ともに本社の就業規則と同一の内容である場合に限り、本社所在地を管轄する労働基準監督署長を経由して一括して届け出ることができます。
出典
- 厚生労働省/モデル就業規則(令和7年12月版・PDF)
- 広島労働局/就業規則 ポイント1・2
このページは、上記の行政機関が公表した資料に書かれている内容にもとづいて労務ソースが整理したものです。金額や料率は年度で変わります。実務でお使いの際は、必ず出典元で最新の内容をご確認ください。
